フィンランド:コロナ禍

フィンランドでのコロナの状況を報告

じわじわ迫るコロナの影響

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コロナ新規感染者の推移(3.2~27)

ちょっと古いが、過去2か月ほどの感染状況(THL・国立保健福祉研究所発表)。

これによると新規感染者は3月10日から増加傾向を示し(20人/日)、月末には80人に達している。グラフにはないが、4月上旬には一気に200人まで急増。その後、50人/日程度に下がったため、THLは「感染のスピードを抑え込みつつある」と公表したものの、感染者の総数は依然として増加している。 その証拠に「拡散のピークは4月中旬」(同時期に学校再開の予定だった)としていた予測を「5月中旬」に訂正、さらに「6月にずれこむ」と言い換えた。抜本的対策が取れない以上、先行きが読めないのは無理もないが、果たして6月に収束方向に進むものか。きわめて不安である。

 

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安全間隔として客同士を1.5m離すためのマーク

パニックに陥らないで済むのは、日常生活は一応機能しているため。食料品店の商品は若干少ないながらも、不自由を感じるほどではない。店舗も感染を防ぐための施策を遂行。客の間隔をあけたり、レジにはアクリル板のカバーを設置。原則として現金は受け取らず、人と人との接触を避けるように努力をしている。

が、不愉快なことも経験。ある日、スーパーですれ違いそうになったフィンランド人が慌てて逆戻り。アジア人である私を見て「コロナが来た」という恐慌に陥ったのがあからさまだった。知人のタイ人は「中国に帰れ」とののしられたという。すべての中国人がウィルス保持者ではないし、そもそもワシらは中国人じゃないよ。

これからはそんな差別が増えていきそうな懸念も否定できない。

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飛沫を避けるためのアクリル板。中央には「現金ご遠慮ください」のお知らせ

 

この期に及んで海外旅行?

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ヘルシンキへの5日間ツアー。ウソではないにしても・・・

後先を考えない海外旅行でコロナに罹患した責任の一端は旅行会社にあるわけだが、現状はどうか。日本発フィンランドツアーを検索してみた。

さすがに4月中のツアーは見当たらなかったが、5月以降だといくつかみつかった。
そのうちの一つが「ヘルシンキ5日間」というもの。
フィンエアーもしくはJAL直行便なら5日間の行程はポピュラー。いわゆる3泊5日という日程で、ヘルシンキのホテルに3泊。丸々二日は自由に使えるし、初日は市内に5時ごろ着くから、夏場ならその後も観光を楽しめる。帰国日も一時くらいまでは余裕。郊外都市も訪れるならちょっと物足りない、といった程度。

しかしこのツアーはそんなものではない。
初日は空港集合。出発は翌日未明。経由便利用のため、ヘルシンキに着くのは同日深夜。3日目はフリーだが、帰国便は早朝初。5日目深夜に成田着というスケジュールだ。片道40時間をかけて、ヘルシンキ観光は一日だけ。

果たして、こうまでしてヘルシンキに来る人がいるのだろうか。仮に需要があるとしても、旅行会社はこれまでの惨事をなんとも思っていないのか。
まあ、様子を見て出発時(たとえば5月1日)に状況が好転していなければ催行中止、予約金は全額返還ということになるのだろう。3月にフライト予約を受け付けていたカタールやSASの4月便はすべてキャンセルされた。上掲の5月便もおそらく取りやめだろう。

とりあえずは商品(ツアー)を販売しなければならないという事情は分かる。しかし、飛行機が飛ぶ保障はないし、出発後に状況が悪化することも十分ありえる。ヘルシンキに着いたはいいが帰れなくなりました、となる可能性もあろう。なにより、仮にコロナ禍が沈静化したかにみえても、罹患する危険性はぬぐえない。それを承知で販売するのだから、時節柄を考慮せずに旅行する人々だけを非難することはできまい。

それでも日常生活は続く

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お菓子のばら売りコーナーは空に

依然として拡大傾向が止まらないコロナ禍。さまざまな制限下で日常生活が続いている。政府が示したコロナ対策は行きわたっているというのが印象。現時点での施策の数々を列挙してみよう。一月前とは大きく変わっている。

・学校は5月中旬まで休校(当初は4月13日までを予定)
・10人以上の集会を禁止(500人⇒50人と推移後)
・カフェ、レストランは休業。ハンバーガー、コーヒー等の持ち帰りのみ許可
・店舗では客同士が1.5メートル以上離れることを推奨
・多くの店舗に消毒液設置
・首都圏閉鎖は依然として続行

先行きの見えない事態に不安はあるが、各種の規制に不満はない、といった状況。突発的な集会を開いたり、海外に出かける人もいない。この辺は統制がよく取れていると思う。


スーパーマーケットの品ぞろえは、騒動以前に戻りつつある状態。乾燥パスタや小麦粉などが完売していることもあるが、4~5日もすれば補充されている。全体としては依然の8割くらいの在庫かな。
そうした中、商品が全くない棚を発見。お菓子のばら売りコーナーである。通常だとここには一口大のチョコレートやキャンディー、グミ等々が数十種類あり、お客は好みのものを好きなだけ袋詰め。グラム単位で清算するというもの。駄菓子の量り売りといえばいいだろう。フィンランド人はこの手のお菓子が大好きなのだ。

 

そんな人気商品が全くない。「ああ、これは学校が休みで家にいる子供たち向け、あるいは自宅待機でTVでも見ながらつまむのだろう。それで買い占められたのだな」と思った。たまたまポテトチップスコーナーもほとんどカラになっていたので、推測が裏付けられたような気がした。ポテトチップスもフィンランド人の必需品だからね。

しかし、実情は違った。量り売りは専用のスクープを使うのだが、不特定多数の人間が素手で触れてしまう可能性もある。なにより商品はむき出しの菓子なので、空中飛散しているウィルスが付着する危険性は十分にある。そうした配慮からの措置だ。調理パンの類も従来は無造作に棚積みしていたが、現在では一つひとつが個別包装されている。

 

果たして日本での対策はどの程度進んでいるのだろうか。漏れ聞く限りでは、どうも緩い気がしてならない。

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トイレットペーパー復活。ペーパータオルは品薄状態

 4月1日時点での総感染者数は約1500人。

もはや日本に帰れない

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3月28日、ヘルシンキを中心とした首都圏を封鎖。境界を超える移動は制限され武装警官が警備にあたるという非常事態になったので当然だ。封鎖は4月19日まで続く予定。

こうした中、4月以降も維持するはずだったフィンエアーの日本直行便はすべて取りやめ。再開の目途はたっていない。

 

以下は机上プランだが、フィンランドから日本に行くすべはないのか、とチケット予約サイトを検索してみた。すると上掲スケジュールのような可能性が。4月6日というのは仮の出発日。
カタール航空を使い、ヘルシンキ⇒ロンドン・ヒースロー⇒仁川⇒成田という経路。40時間以上かかるうえ、往復運賃は40万円を超える。それでも行かねばならない人もいるだろうが、もう一つの問題がある。日本での入国に関することである。

 

日本人が日本に入国すること自体は可能だが、厳しい制限も加えられることになった。3月21日午前零時以降に到着した場合、その後の移動に公共交通機関を使うことが禁じるというのが一つ。バス・電車はもちろん、タクシーの利用も不可。。国内便への乗り継ぎもできない。知人に迎えに来てもらうか、レンタカーを手配して自力で移動するしかない。

 

さらには14日間の待機命令。待機先は「検疫所長が指定する場所」とされ、基本的には自宅。自宅のない私などはホテル住まいになるが、2週間の滞在費といったら・・・。さらには帰国便(日本⇒フィンランド)が運航される保証はないのだ。
そういうわけで、帰国は実質的に不可能になった。

旅行会社の責任はどうする?

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フィンエアー、日本直行便を停止

3月上旬のことだが、知人がフィンランド旅行についての打診をしてきた。当然ながら、やめるように勧告。そうしたら案の定だ。フィンランド「など」に滞在していた女性がコロナ発症。3月17日に二例があった。「フィンランド“など”」という表記ではなく、訪問国を明らかにしてほしいものだが、イタリアでの爆発的な拡散以降、ヨーロッパは危ないというのは常識になったと思っていた。
が、実情はまるで違う。

 

3月中旬、フィンエアーは運航の9割減を発表。が、同社のドル箱であるヘルシンキ⇔日本(5空港)の路線は維持。ヘルシンキ⇔羽田で予定していた増便はとりやめ、という方針を示した。4月以降もバンバン飛ばしますよ、ということだ。楽観に過ぎないか、と感じたことを覚えている。3月15日時点のヘルシンキ⇔成田の往復料金は7万円を切っていた。

そういうわけで、3月中旬くらいまでなら、いくらでも海外旅行が(少なくとも予約は)できたわけだ。学校も休みだし、ツアーがあるなら行っちゃおう、と考える人がいてもおかしくはない。浅はかではあるが、しょうがない。売ってるんだから。

 罹患の可能性は十分に推測できた

3月2日から13日にかけて欧州を旅行してコロナに罹患をした京都産業大学の学生たちに批判が集まったのは記憶に新しい。発症後の行動は非常識ではあるが、2日の出国時点で、彼らに危機感はなかっただろう。旅行を見合わせるように助言した人もいないはずだ。そりゃそうだ。大手旅行代理店が販売してるんだもの。

17日に帰国、発症した事例に関してはもう少し慎重になるべきだったのでは、との思いもあるが、旅行会社の責任のほうが大きい。3月2日には「ヨーロッパ=危険」というのは既定事項になっていたのに、堂々と販売していたのだから。その時点で旅行会社がツアーを中止していれば、彼らが罹患することはなかったのである。なお、当社では2月20日以降の予約はすべてキャンセル、当面の催行は不能である旨を通知した。しかし、弱小会社(当社)の訴えが世間に影響を与えることは全くなかった。 

某大手旅行会社の3月26日の公告

※出発日:2020年5月3日までの出発 : 催行中止
※出発日:2020年5月4日以降の出発 : 今後の状況を鑑み改めてご案内いたします。

 時すでに遅し。一月前に決断すべきだった。

 

商品がなくなった

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トイレットペーパー完売

3月中旬。コロナ禍の長期化が危ぶまれてくるとともに、商店から品物がなくなり始めた。まっさきに無くなったのは一部の食品(後述)だが、日本人の共感を得られやすく、かつインパクトのあるトイレットペーパーコーナーから紹介しよう。
写真を見れば一目瞭然。すべてのトイレットペーパーが完売。これ、おそらくは日本およびアジア諸国でのニュースが原因。

パルプ製品の生産大国であるフィンランドで、トイレットペーパーが品不足になることはまず考えられない。しかし、日本などでの買占め・品不足を伝えるTVを見て、「ああ、それは大変だ」と無用の警戒心を引き起こしたものと思われる。冷静に考えればわかるが、コロナが蔓延したからといってトイレットペーパーの消費量が増えるわけではない。手を洗ったあとは布タオルではなく、使い捨てのペーパータオルを使うことが推奨されたので、その消費量は確かに増えたが、品不足にはならない。生産能力は十分にあるのだ。

しかし風評の影響力は強く、あっという間に売り切れ。おふざけラジオ番組で流された「年内分のトイレットペーパーは備えたぞ」なんてコメントもその一因だったかもしれない。上掲写真は3月14日(土曜日)撮影。予想通り、16日(月)には棚いっぱいにトイレットペーパーが積まれていた。

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売り切れ商品にお国柄が表れる

3月20日、フィンランドで初めての死亡者が発生。首都圏封鎖が検討され、市民の危機感が高まり、日用品の買いだめが進んだ。前述のトイレットペーパー不足は一過性のものだと分かっていたが、食品となると話が違う。輸入物も多いし、切実度が高いからだ。
この4~5日で姿を消した主な食品は以下の通り(順不同)。地域・店舗によって差があるでしょう。

・スパゲティ、マカロニ、インスタントラーメン
・冷凍ピザ
・缶詰のトマトソース
・ひき肉
・ニンニク、ショーガ

調理が簡単で保存性の高いものということで乾麺や冷凍品が買い占められるのはよくわかる。が、トマトソースの需要がこれほど高いとは思わなかった。
ツナやミートパテの缶詰に影響はなし。ニンニクやショーガは「免疫力を高める」ということだろう。確かにその通りだが、即効性があるわけじゃないのに。ま、この辺は日本でも同じですね。TVで「〇〇ダイエット」なんて紹介されると即日完売、みたいな。
 

いっぽう、生鮮食料品は従来通りの品そろえ。この時期の野菜はもちろん、肉類も輸入品が多いので、むしろそっちから無くなっていくんじゃないかと危惧していた。この先はどうなるかわからないけど。

 

 

コロナ対策はじまる

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閉鎖1週間前のジムだが、誰もいない

3月に入ると、誰しもがコロナに無関心ではいられなくなった。なにしろ一週間ほどの期間で感染者は50人を超えたのである。人口比で単純換算すると、日本なら1000人以上に相当するから、その衝撃の強さも推測できよう。

フィンランド政府の対応は早かった。3月10日には国境閉鎖の可能性を示唆、16日より実施。不要不急の渡航の自粛を要請するとともに、フィンランド国籍もしくは滞在許可を持つもの以外の入国を制限。500人以上規模のイベントは中止、学校は4月13日まで休校とすることを決定。

 

民間も政府の要請に応えた。大手レストランチェーンは営業を控え、プールやフィットネスジムは閉鎖。スーパーマーケットのレジ付近には客同士が1.5m以上の間隔をとれるようにマーキングするなど、さまざまな対策が取られ始めた。

3月12日、国内の陽性患者は100人を超えた。

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